○木村 文香(Kimura Fumika) 坂元 章(Sakamoto Akira) 相良 順子(Sagara Junko) 坂元 桂(Sakamoto Katsura)
稲葉 哲郎♯(Inaba Tetsuro)
(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科) (♯立命館大学産業社会学部)
キーワード:テレビゲーム、メディア、社会性
生活にやがとけ込みつつある反面、使用が過度である場合、社会性への悪影響があるとの社会通念があるようだ。これらと社会性との因果関係について検討されたものは少ないが、相良坂元稲葉坂元(1995)はパネル調査で因果関係を推定している。社会性を測る尺度として共感性、公的私的自己意識、社会不安、を用いて分析を行っており、その結果大学生では、を機として利用することが多いほど公的自己意識が低くなること、共感性が高いとを機として利用する年数が長くなることが示された。
そこで本研究ではこのデータをさらに掘り下げ、好きなテレビゲームのソフトとの因果関係や、他のメディアとの関連について検討する。
T.調査方法と被調査者:調査は同じ質問紙を用いて、2度行われた。両時点で回答が得られた東京都内の私立男子高校の生徒198名、金沢工業大学男子学生177名を有効回答として用いた。
U.質問紙の構成:
(1)デモグラフィック要因:学校、年齢、兄弟、居住形態
(2)テレビゲーム使用量:家でファミコンを使用する時間(日数/週、時間/平日・休日)、コンピュータのゲームとしての使用量(以後「PCゲーム」とする)、最も好きなファミコンの種類(ロールプレイングゲーム(以下「RPG」)、シューティング、アドベンチャー、シミュレーション、スポーツ、アクション、他)であった。以上の質問項目から、一週間当たりのPCゲーム使用量・ファミコン使用量を算出した。
(3)メディア使用量:テレビ、ビデオ、本(マンガ以外)、マンガの一日の平均使用時間。
(4)社会性変数(2件法):@共感性(加藤・高木,1980)32項目、A公的自己意識(押見・石川・渡辺,1979)6項目、B私的自己意識(押見他,1979)11項目、C社会的不安(押見他,1979)6項目、Dソーシャルスキル(堀毛,1985)14項 目。項目分析の結果、共感性では5項目を除いた。
分析は全て、Figure1(省略)に示すような交差遅れモデルを用いて校種別に行った。なお、年齢、兄弟、居住形態で統制した。
T.テレビゲーム使用量と社会性変数の因果関係の推定
PCゲームとファミコンの使用量を種類別にモデルに投入して分析を行い、結果をTable1(省略)としてまとめた。高校生、大学生とも、PCゲームをすると公的自己意識が低下し、ファミコンをすると上昇するという効果が有意であった。また、大学生に関してはファミコンをすると共感性が下がるという効果が有意であった。更に大学生で私的自己意識が低いとファミコンをするという効果が有意であった。
U.好きなファミコン・ソフトと社会性変数の因果関係の推定
好きなソフトを種別にモデルに投入したところ、Table2(省略)のような結果となった。RPGとシューティングについては全く因果関係が見られなかった。シミュレーションを好むと共感性が低下するという効果が大学生で有意であった。また、共感性の高い高校生がシミュレーションを好むようになるという結果が有意であった。スポーツでは私的自己意識が上昇するという効果が有意であり、また、共感性が低い高校生、私的自己意識が低い高校生がアドベンチャーを好むようになっていた。高校生、大学生共にソーシャルスキルが高いとシミュレーションを好むようになり、また私的自己意識が低い大学生はアドベンチャーを好むようになっていた。
V.・使用量と社会性変数の因果関係の推定
との使用量を種類別にモデルに投入して分析を行ったところ、Table3(省略)のような結果となった。高校生、大学生共に本を読むと共感性が下がるという効果が有意であった。
PCゲームとファミコンに関する結果は、一概に負の影響を示さず、社会通念を単純に支持するものとはいえない。
また、公的自己意識への影響に関しては、PCゲームとファミコンで逆の結果が得られており、これは両者が似て非なるものであることを示唆している。ファミコンは友人との話題を提供したり、貸し借りを行うなどによって、友人との関係を深め、社会性を向上させるのに対し、PCゲームに関してはこうした機能がないのかもしれない。
Table2(省略)を見ると、好きなソフトがシミュレーションである場合は社会性が低下することがあるが、スポーツである場合はむしろ上昇する場合があることがわかる。また、好きなソフトがRPGとシューティングであった場合には、因果関係がなかった。これらのことも、社会通念とは一致しないものといえよう。
また、読書では共感性において負の影響が見られ、少なくともテレビゲームの結果に見られる負の影響が突出しているとはいえない。
以上のように、本研究は部分的には社会通念を支持するような結果を示したが、単純にそれを肯定するものではなかった。
堀毛一也,1985,自己モニタリングと対人認知日本グループ・ダイナミックス学会第33回大会発表論文集,47-48.
加藤隆勝・高木秀明,1980,青年期における情動的共感性の特質筑波大学心理学研究,2,33-42.
押見輝男・石川直弘・渡辺浪二,1979,SCSの検討(その2) 日本グループ・ダイナミックス学会第27回大会発表論文集,29-30.
相良順子・坂元章・稲葉哲郎・坂元桂,1995,コンピュータおよびテレビゲームの使用とパーソナリティの因果関係−高校生と大学生に対するパネル調査−.日本心理学会第59回大会発表論文集,186.
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