テレビゲームのジャンル別使用量と学校不適応の因果関係
−男女別の検討−

○木村 文香(KIMURA, Fumika)

坂元 章 (SAKAMOTO, Akira)

(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科・日本学術振興会)

(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科)

key words: テレビゲーム、学校不適応、小学生、男女別


問題と目的

近年の不登校児数の増加と共に、現在のところは登校しているが、不登校の予備軍となっている学校不適応の児童がいることが指摘されている (e.g., 弘中, 1999; 藤井, 1997)。このような学校不適応に関する様々な原因の一つとして、テレビゲーム遊びの悪影響が懸念されることがある。 テレビゲーム遊びは、人間関係の希薄化を招くので、それによって級友関係が悪くなり、学校不適応に陥るというのがそのロジックでもあるようだ。 小学生に対する実証研究ではパズルゲームが級友関係を悪化させるという結果が得られているが(木村・坂元, 2001)、 テレビゲーム使用量全体では必ずしもこの懸念が支持されているとはいえない(木村・坂元, 2001)。 また、テレビゲームの使用量の影響には男女差がある可能性があり、一概にテレビゲーム使用が学校不適応に悪影響を及ぼしているとはいえない。
そこで本研究では、これらの因果関係をより詳細に検討するため、2回のパネル調査を実施し、 テレビゲームのジャンル別の使用量と学校不適応の諸側面の因果関係を男女別に明らかにすることを目的とする。パネル調査によると、 時間的に前に測定された1回目のテレビゲーム使用量から、時間的に後に測定された2回目の学校不適応変数に及ぼす効果が有意であれば、 テレビゲームが学校不適応に影響していると見られる。

方法

調査方法  同一の被調査者に対し3ヶ月のインターバルをおき、同一質問紙による調査を2回行った。

調査時期 1回目1999年7月、2回目同年10月。

被調査者 公立小学校3校の、6年生男女(438名;男子;235名、女子;183名、不明;20名)。

質問紙の構成:

テレビゲーム使用量  ジャンル(アクション・シューティング、RPG・アドベンチャー、シミュレーション、リズム、レーシング、スポーツ、パズル)ごとに1週間の使用日数と平日・休日 1日の使用時間をそれぞれ尋ねた。分析の際には、平日の使用時間に1週間の使用日数をかけ合わせ、休日の使用時間を加えて算出した、1週間の合計使用時間を用いた。

学校不適応変数  教育環境適応尺度U(14項目;小泉, 1995)と学校ぎらい感情測定尺度(古市, 1991)を用いた。 分析の際には、いずれも得点が高いほど学校不適応を示すように調整した。

結 果

学校不適応変数の因子分析  学校不適応変数に関して主因子法による因子分析を行ったところ、固有値が第1因子7.95、 第2因子2.03、第3因子1.73、第4因子1.60、第5因子1.24となったため、5因子を採択し、バリマックス回転を施した。 各因子は@学校ぎらい(α=.92)、A級友関係(負)(α=.73)、B自校への無関心度(α=.69)、C級友関係(正)(α=.60)、 D学習意欲の低さ(α=.64)の5因子に分かれた。しかし、第2因子は第4因子の逆転項目であり、別の因子に分かれたのは反応の構えによるものと考え、 今後の分析においては「級友関係の貧弱さ」として同一の因子として扱った。

テレビゲーム使用量が学校不適応に及ぼす影響  前述の4つの因子に関してそれぞれ、テレビゲームのジャンル別に、図1のような交差遅れ効果モデルを用いて共分散構造分析を行い、太線で表したところを検討した。 標準化された因果係数は表1のようになった。

この結果、男子ではパズルゲームの使用が級友関係の貧弱さを、アクション・シューティングが自校への無関心を、それぞれ高めていることが示された。

女子では、RPG・アドベンチャーとリズムゲームが、それぞれ学校ぎらいを高めていた。

学校不適応がテレビゲーム使用量に及ぼす影響  共分散構造分析によって得られた、標準化された因果係数は表2に示した。

この結果、女子においては、学校不適応がテレビゲーム使用に及ぼす影響はみられなかった。 一方、男子では、学習意欲の低下がアクション・シューティング、シミュレーションの使用量を増やしており、また、自校への無関心が高まると、 リズムゲーム使用を減らす(β=-.09, p<.05)という結果が得られた。

考 察

級友関係への悪影響は、男子のパズルゲーム使用のみにみられた影響であった。 この理由として、パズルゲームが単純なゲームであるため、協力して進めていくといった遊び方がされにくく、従って、単独で遊んでいるときのみならず、 複数で遊んでいるときでもゲーム中の会話が少ないことや、級友等との情報交換といったコミュニケーションの媒体にもなりにくいということが考えられる。

学校ぎらいに関しては、女子のRPG・アドベンチャー、リズムによって促されている。 学校ぎらいは漠然とした学校不適応感を表しており、テレビゲーム遊びの魅力が学校への魅力よりも勝ったことによる結果とも考えられる。

いずれの因果関係においても、男女で同一の結果が得られていない。 ここから、テレビゲームから受ける影響、学校不適応によってもたらされるテレビゲームへの接し方が異なっていることが考えられる。 テレビゲーム使用が、学校不適応から受ける影響は、女子では全くみられていないことが示されている。ここから、女子は男子に比して、 学校不適応によるストレスをテレビゲーム以外のもので紛らわしているのではないかと考えられる。一方、男子はテレビゲームによって紛らわしているのかもしれない。

このように、テレビゲーム使用の意味合いには男女差があるのかもしれない。 今後はテレビゲーム使用の意味について、さらに詳細に検討していかねばならない。


図1 共分散構造分析のモデル

引用文献
弘中正美 1999  不登校問題への対応 小川捷之・村山正治(編) 学校の心理臨床 心理臨床の実際2 東京都 金子書房 Pp. 30-71.
藤井義久 1997  現代の学校現場が抱える諸問題−学校ストレスを中心に− 教育心理学研究, 45, 228-237.
古市裕一 1991  小・中学生の学校ぎらい感情とその規定要因 カウンセリング研究, 24, 123-127.
木村文香・坂元章 2001  テレビゲーム使用量と学校不適応諸側面の因果関係の検討 日本発達心理学会第12回大会(鳴門教育大学)発表論文集, 150.
木村文香・坂元章 2001  テレビゲームのジャンル別使用量と学校不適応の因果関係 日本心理学会第65会大会(つくば国際会議場)発表予定.
小泉令三 1995  小学校高学年から中学校における学校適応感の横断的検討, 福岡教育大学紀要, 44, 295-303.

 

表1 標準化された因果係数  TVゲーム→学校不適応

学校ぎらい

級友関係の貧弱

自校への無関心

学習への無意欲

男子

女子

男子

女子

男子

女子

男子

女子

アクション・
シューティング

-.02

 .07†

-.02

 .08

 .11*

-.00

 .01

.09

RPG・
アドベンチャー

-.07

 .10*

-.02

 .04

-.01

-.02

 .02

-.02

シミュレーション

 .01

.06

-.00

-.03

 .04

-.07

 .06

-.01

リズム

-.05

 .10*

-.04

 .03

-.03

-.09

-.01

-.04

レーシング

-.02

 .08†

-.00

 .07

 .05

-.01

 .02

 .03

スポーツ

-.05

.04

-.03

-.04

 .01

-.05

-.01

 .02

パズル

 .04

.07

 .12*

 .04

-.10†

-.01

 .02

.02

註1; †p<.10, *p<.05, **p<.01    註2; 有意な値には、網かけをほどこした。

表2 標準化された因果係数  学校不適応→TVゲーム

学校ぎらい

級友関係の貧弱

自校への無関心

学習への無意欲

男子

女子

男子

女子

男子

女子

男子

女子

アクション・
シューティング

-.06

.02

-.00

.02

.04

-.06

.13**

.10

RPG・
アドベンチャー

.01

.08

-.01

.08

-.04

.10

.01

-.04

シミュレーション

 .11†

 .04

.08

 .00

 .01

 .13†

 .18**

-.01

リズム

-.10†

 .02

 .00

-.02

-.16**

 .05

.03

 .12†

レーシング

 .00

 .10

 .06

 .09

-.02

 .05

.09

 .02

スポーツ

 .04

-.03

-.01

-.07

 .01

 .01

-.01

-.05

パズル

-.06

 .05

 .01

 .07

-.03

 .08

-.01

-.02

註; †p<.10, *p<.05, **p<.01    註2; 有意な値には、網かけをほどこした。