テレビゲーム使用量と学校不適応の
因果関係の検討(2)
−性格変数の調整効果−
○木村文香 坂元章
(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科)
問 題
テレビゲームが急速に普及し始めた1983年以来、テレビゲーム遊びの悪影響が懸念されてきた。例えば、対人相互作用が減り、対人関係能力が低下するなどである(e.g., 坂元, 1998; 橋元, 1996)。一方、テレビゲームはラポールの形成に役立つなど、臨床場面での使用は有効であるとの報告も多くなされている(e.g., 天野・福島, 1998; Sietsema et al., 1993)。
これまでにもいくつかの調査研究がこの問題を検討してきており(e.g., Lin & Lepper, 1987)、木村ら(2000)は、高校生において、テレビゲーム遊びが、一部の社会的適応に有効であるとの結果を報告している。しかし、児童を対象とした実証研究はほとんどなされていない。そこで、本研究では、テレビゲームと小学生の学校不適応の因果関係を明確にするために、2回のパネル調査を実施した。
木村・坂元(2000)では、@)テレビゲーム使用は学校不適応との関係において、原因となるのか、結果となるのか、A)テレビゲームが学校不適応に影響を与える場合、その影響は、ポジティブなのかネガティブなのかを検討した。その結果、テレビゲーム使用が、漠然とした学校ぎらいによる学校不適応を招いていることが示唆されたが、逆にテレビゲーム使用が学校不適応によって促されるということも示された。しかし、以上のような結果には、性格特性は考慮されていない。テレビゲーム遊びをしていたとしても、元来社交的であるなど、対人相互作用を多く求め、また多く行っていれば、対人相互作用は減らず、悪影響はないかもしれない。
そこで、本発表では、性格特性がテレビゲーム使用量と学校不適応の因果関係を調整しているのかどうかを明らかにすることを目的とする。
方 法
調査方法 同一の被調査者に対し3ヶ月のインターバルをおき、同一質問紙による調査を2回行った。実施は、担任教師による質問紙の一斉実施であった。
調査時期 1回目;1999年7月、2回目;同年10月。
被調査者 中部地方O市立小学校3校の5、6年生男女(438名;男子;235名、女子;183名、不明;20名)。
質問紙の構成
質問紙には、以下の項目が含まれていた。1、2回目共に同一内容を同一質問項目で尋ねた。
デモグラフィック要因 学校、学年組、出席番号、年齢、兄弟数を尋ねた。
テレビゲーム使用量 1週間あたりの使用日数(「しない」から「毎日」までの8件法)と平日・休日1日あたりの使用時間(平日と休日それぞれに関して。「0」から1時間ごとに6件法)をそれぞれ尋ね、1週間あたりの使用時間を算出して、分析に用いた。
学校不適応変数 @教育環境適応尺度U(以下「ASEU」と表記;小泉, 1995)4件法、14項目、A学校ぎらい感情測定尺度(古市, 1991)5件法、12項目を用いた。前者は主に、級友関係面を測定する尺度であり、後者は漠然とした学校不適応感を測定する尺度である。
性格変数(5件法) @社交性(社交性尺度; 今城, 1991)5項目、A他者志向性(他者志向性尺度; 山内・堀毛, 1991)11項目、B自己顕示性(自己顕示性尺度; 今城, 1991)13項目、Cソーシャルスキル(KiSS-18; 菊池, 1988)16項目、をそれぞれ用いた。
結果と考察
各性格変数の平均値によって、それぞれ高群と低群に分け、テレビゲーム使用量と学校不適応変数の得点に関して、図1のようなモデルを用いて、共分散構造分析を行った。


図1 共分散構造分析の基本的分析モデル
標準化された因果係数は表1に示した。全ての性格変数が調整変数となっていた。
テレビゲーム遊びはASEUへの影響は持っておらず、また、社交性が高い場合、テレビゲーム使用が学校ぎらいの原因となることが示された。
学校不適応変数からテレビゲーム使用量へのパスを検討してみると、社交性、自己顕示性、ソーシャルスキルがそれぞれ高い場合、学校不適応の結果、テレビゲーム使用量が増加することが示された。また、他者志向性が低い場合には、教育環境への不適応がテレビゲーム使用を促すことが示された。
このように、テレビゲームが学校不適応の原因となるのは、社交性が高いときのみであり、しかも級友関係の悪化による学校不適応ではなく、漠然とした学校不適応に影響があるとの結果が示された。つまり、テレビゲームが人間関係を悪化させることはないといえよう。テレビゲームによって学校ぎらいが喚起されているが、社交性が高い場合なので、テレビゲームを通じて人間関係を構築している可能性も考えられる。しかし、本研究では、実際にテレビゲームをしている際の状況は考慮されていない。今後は、テレビゲーム遊びの際の状況を考慮することが課題となろう。
引用文献
天野奈緒美・福島章 1998 心理療法におけるテレビゲームの活用可能性に関する試論 上智大学心理学年報,22,25-31.
古市裕一 1991 小・中学生の学校ぎらい感情とその規定要因 カウンセリング研究,24,123-127.
橋元良明 1996 情報化と子供の心身 児島和人・橋元良明(編) 変わるメディアと社会生活 東京都 ミネルヴァ書房 Pp. 150-170.
今城周造 1991 なぜ人と関わろうとするのか−社会的報酬 大渕憲一(監訳) 対人行動とパーソナリティ 京都府 北大路書房 Pp. 16-49.(A. H. Buss 1986, Social behavior and personality Hillsdale, New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates.)
菊池章夫 1988 思いやりを科学する 東京都 川島書店
木村文香・坂元章 2000 テレビゲーム使用量と学校不適応の因果関係の検討−小学生を対象としたパネル調査−, 日本心理学会第64回大会発表予定.
木村文香・坂元章・相良順子・坂元桂・稲葉哲郎 2000 テレビゲーム使用と社会的適応性に関する縦断データの分析 性格心理学研究, 8, 130-132.
小泉令三 1995 小学校高学年から中学校における学校適応感の横断的検討, 福岡教育大学紀要, 44, 295-303.
Lin, S., & Lepper, M. R. 1987 Correlates of children's usage of videogames and computers. Journal of Applied Social Psychology, 17, 72-93.
坂元章 1998 テレビゲームと暴力 −悪影響論をめぐって− 心理学ワールド, 2, 20-24.
Sietsema, J. M., Nelson, D. L., Mulder, R. M., Mervau-Scheidel, D., & White, B. E. 1993 The use of a game to promote arm reach in persons with traumatic brain injury. American Journal of Occupational Therapy, 47, 19-24.
山内敏代・堀毛一也 1991 演技と仮面−公的と私的 大渕憲一(監訳) 対人行動とパーソナリティ 京都府 北大路書房 Pp. 141-188.(A. H. Buss 1986, Social behavior and personality Hillsdale, New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates.)
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表1. 各モデルにおける標準化された因果係数 |
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TVゲーム使用量 ↓ ASEU |
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TVゲーム使用量 ↓ 学校ぎらい |
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ASEU ↓ TVゲーム使用量 |
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学校ぎらい ↓ TVゲーム使用量 |
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社交性 |
高群 |
-.02 |
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.11* |
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-.14** |
|
.20** |
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低群 |
-.02 |
|
.05 |
|
.00 |
|
.00 |
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他者志向性 |
高群 |
-.01 |
|
.05 |
|
-.04 |
|
.12 |
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|
低群 |
-.04 |
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.10† |
|
-.11* |
|
.08 |
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自己顕示性 |
高群 |
-.09† |
|
.09† |
|
-.16** |
|
.14** |
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低群 |
.02 |
|
.06 |
|
.00 |
|
.07 |
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ソーシャルスキル |
高群 |
-.01 |
|
.10† |
|
-.14* |
|
.16** |
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|
低群 |
-.04 |
|
.05 |
|
-.01 |
|
.04 |
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註1; 有意なものには網がけをほどこした。 註2;†p<.10 * p<.05 ** p<.01 |
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