本書は、インターネットの使用によって人間や社会がどのような影響を受けるか、また、それを人間や社会のために、どのように利用できるかについて、心理学やその近接分野で行われてきた研究を紹介しながら論じたものである。とくにインターネットに関する研究が盛んな教育臨床組織の3つの分野を取り上げた。本書は、7つの部分からなっている。

 

1)序章:インターネットと心理学

  本書の導入として、まず、インターネットの普及の現状と、それに対する心理学の取り組みについて全般的に解説している。最近、インターネットが爆発的に普及し、それとともに用途も急速に多様化していること、それに伴って、インターネットに関する心理学やその近接分野の研究の範囲も大幅に拡大していることを指摘している。また、この章では、読者の便宜になるように、本書の構成を説明している。

 2)第1部:教育におけるインターネット

 インターネットの利用は、教育の分野において大いに注目されている。教育の現場ではすでに、インターネットを利用した教育実践がしばしば行われ、大規模な研究プロジェクトも見られている。こうした背景には、インターネットは、情報活用能力、国際理解、学力などを向上させる有効な教育ツールではないかという期待がある。そして、最近では、インターネットを最大限に活用して、キャンパスを持たずに運営されるヴァーチャル大学さえも出現している。第1部では、これらのトピックを扱い、それに関する研究や実践、大型プロジェクトなどの概要を紹介している。



3)第2部:臨床におけるインターネット 

 
インターネットの利用は、臨床の分野においても注目されている。臨床の現場では、インターネットによる心理療法が行われており、それは急速に拡大している。インターネットを利用した自助グループの活動も盛んである。また、インターネットが、障害者や高齢者の活動範囲を広げ、その支えとなりうることが指摘されている。さらに、インターネットには、異人種や障害者などに対する偏見を低減する効果が期待されている。第2部は、これらのトピックに関するものであり、その研究や実践を解説し、臨床におけるインターネット利用が豊かな可能性を持っていることを指摘している。



4)第3部:組織におけるインターネット

 
インターネットは、組織における利用や、それが組織に与える影響についても人々の関心を集めている。第3部は、このトピックに関するものであり、とくにコンピュータ・ネットワークを用いた会議の問題を扱っている。従来の研究を紹介するとともに、こうしたネットワーク会議は、遠隔地にある参加者の会議を容易にするという物理的な側面での有益性だけでなく、参加者の平等性や創造的なアイディアの産出に寄与するという心理的な側面での有益性も持っていることを明らかにしている。



5)第4部:インターネットの影

 
 第1部〜第3部は、インターネットの有効利用を扱ったものであり、インターネットの光の部分に焦点をあてているが、インターネットには、影の部分があることも、しばしば懸念されている。例えば、1)インターネット使用は人々の社会的不適応をもたらすのではないか、2)インターネットでは、有害情報が流れやすく、青少年に対する悪影響や犯罪を引き起こすのではないか、3)インターネットは人々の間の差別や格差を広げるのではないか、などである。第4部は、これらに関する研究や実践などを解説している。インターネットは、深刻な弊害を引き起こす潜在力を持っているが、恩恵も非常に大きいので、その利用に対して単純に背を向けるのではなく、むしろ、弊害を減らし恩恵をさらに増やすためにそれをどのように利用するかを模索することが重要であると主張されている。



6)終章:インターネットの有効利用

 終章で
、第1部〜第4部の議論をまとめている。各章の内容を要約するとともに、それを踏まえたうえで、なぜインターネット利用は有効であるかを議論し、さらに、今後のインターネット研究と実践について触れている。

 

7)付録:インターネット用語の解説

最後に、付録として、インターネットに関する重要用語の解説をつけた。本書の中で、読者が意味の分からない言葉に出会っても、これでその意味を確認できるようになっている。
 

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